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日本ではキャットフードといえばマグロ(ツナ)
日本でキャットフードといえばマグロ(ツナ)という人が大半を占めるのではないでしょうか。マッサンのキャットフードの学校を見に来てくれている方々の場合は、チキンやサーモン、ターキーなどが普通な感覚になっているかもしれませんが(笑)
そうですね!スーパーやホームセンターで買っていたときはほとんど必ずと言っていいほどマグロやカツオ系を選んでいました。
世界的にみると日本ほどマグロやカツオなどの魚類がペットフードの主軸になっている国はないと思います。このサイトをご覧いただいている皆さんも最初は猫に鶏肉のドライフードという方が違和感があったのではないでしょうか。
…若い方の場合はそんなに珍しくないかもしれませんが(笑)私たちの世代だと魚一辺倒といえるほど、猫には魚のキャットフードでしたよね。
私もキャットフードといえばマグロなどの魚類という認識でしたので、鶏肉のキャットフードがとても人気が出てきているということを聞いたときは半信半疑でした。
猫の特性を考えてみれば不思議なことではないのですが、「猫には魚」というイメージが強すぎる日本ではまだまだこの認識は続いていくかと思います。
海外のマグロ事情
ペットフード製造で考えた場合、私が数社訪れたヨーロッパの工場で原材料にツナが選択できる工場はありませんでした(笑)「どんな原材料が使える?」と確認しても選択肢にも入っていないんですよ。「ツナは?」「ノー」位の反応です。
実際にヨーロッパのマグロ事情を考えてみたいと思います。まずは以下資料を見てみてください。
2017年度世界のマグロの漁獲量
順位 | 国名 | 単位:トン | |
---|---|---|---|
1 | インドネシア | 375,395 | 東南アジア |
2 | 日本 | 177,481 | 東アジア |
3 | 台湾 | 169,667 | 東アジア |
4 | メキシコ | 133,025 | 北アメリカ |
5 | エクアドル | 123,744 | 南アメリカ |
6 | スペイン | 122,259 | ヨーロッパ |
7 | イラン | 119,941 | 南アジア |
8 | パプアニューギニア | 115,190 | オセアニア |
9 | 韓国 | 90,500 | 東アジア |
10 | フィリピン | 89,222 | 東南アジア |
11 | 中国 | 86,271 | 東アジア |
12 | フランス | 70,648 | ヨーロッパ |
13 | セーシェル | 60,209 | 東アフリカ |
14 | 米国 | 55,445 | 北アメリカ |
15 | モルディブ | 50,454 | 南アジア |
16 | パキスタン | 45,216 | 南アジア |
17 | スリランカ | 43,436 | 南アジア |
18 | マレーシア | 42,715 | 東南アジア |
19 | オマーン | 40,301 | 西アジア(中東・近東) |
20 | パナマ | 38,023 | 中央アメリカ |
21 | キリバス | 37,525 | オセアニア |
22 | ベトナム | 26,385 | 東南アジア |
23 | タイ | 26,287 | 東南アジア |
24 | ミクロネシア連邦 | 25,532 | オセアニア |
25 | ガーナ | 24,850 | 西アフリカ |
26 | ベネズエラ | 24,384 | 南アメリカ |
27 | インド | 22,069 | 南アジア |
28 | イエメン | 20,358 | 西アジア(中東・近東) |
29 | ペルー | 19,091 | 南アメリカ |
30 | オーストラリア | 18,642 | オセアニア |
31 | コロンビア | 18,247 | 南アメリカ |
32 | マーシャル諸島 | 18,164 | オセアニア |
33 | ソロモン諸島 | 17,719 | オセアニア |
34 | フィジー | 16,646 | オセアニア |
35 | エルサルバドル | 13,215 | 中央アメリカ |
36 | バヌアツ | 13,105 | オセアニア |
37 | キュラソー | 11,309 | 中央アメリカ |
38 | ニカラグア | 10,905 | 中央アメリカ |
39 | モーリシャス | 9,863 | 東アフリカ |
40 | ブラジル | 9,036 | 南アメリカ |
41 | ベリーズ | 7,392 | 中央アメリカ |
42 | セネガル | 7,375 | アフリカ |
43 | イタリア | 7,294 | ヨーロッパ |
44 | ポルトガル | 6,406 | ヨーロッパ |
45 | コモロ | 5,976 | 東アフリカ |
46 | 仏領ポリネシア | 5,485 | オセアニア |
47 | アンゴラ | 5,319 | 中央アフリカ |
48 | マルタ | 4,770 | ヨーロッパ |
49 | タンザニア | 4,099 | 東アフリカ |
50 | グアテマラ | 4,098 | 中央アメリカ |
51 | カーボヴェルデ | 3,906 | 北西アフリカ |
52 | 米領サモア | 3,608 | オセアニア |
53 | クック諸島 | 3,569 | オセアニア |
54 | 南アフリカ | 3,317 | 南アフリカ |
55 | ニュージーランド | 3,181 | オセアニア |
56 | サモア | 3,168 | オセアニア |
57 | コートジボワール | 2,740 | 西アフリカ |
58 | カナダ | 2,726 | 北アメリカ |
59 | スリナム | 2,660 | 南アメリカ |
60 | モロッコ | 2,649 | 北アフリカ |
61 | アイルランド | 2,508 | ヨーロッパ |
62 | ニューカレドニア | 2,341 | オセアニア |
63 | トルコ | 2,336 | 西アジア(中東・近東) |
64 | ギニア | 2,300 | 西アフリカ |
65 | ツバル | 2,101 | オセアニア |
66 | セントビンセント・グレナディーン | 2,065 | 中央アメリカ |
67 | モーリタニア | 1,905 | 西アフリカ |
68 | クロアチア | 1,818 | ヨーロッパ |
69 | チュニジア | 1,791 | 北アフリカ |
70 | リビア | 1,631 | 北アフリカ |
71 | マダガスカル | 1,523 | 東アフリカ |
72 | グレナダ | 1,363 | 中央アメリカ |
73 | アルジェリア | 1,038 | 北アフリカ |
74 | レユニオン | 1,034 | 東アフリカ |
75 | 北マリアナ諸島 | 1,003 | オセアニア |
76 | グアム | 970 | オセアニア |
77 | トリニダード・トバゴ | 968 | 中央アメリカ |
78 | キューバ | 935 | 中央アメリカ |
79 | アラブ首長国連邦 | 900 | 西アジア(中東・近東) |
80 | ギリシャ | 843 | ヨーロッパ |
81 | キプロス | 678 | 西アジア(中東・近東) |
82 | サントメ・プリンシペ | 659 | 中央アフリカ |
83 | ドミニカ共和国 | 519 | 中央アメリカ |
84 | 赤道ギニア | 511 | 中央アフリカ |
85 | トンガ | 423 | オセアニア |
86 | ナミビア | 409 | 南アフリカ |
87 | ケニア | 406 | 東アフリカ |
88 | セントルシア | 377 | 中央アメリカ |
89 | バルバドス | 318 | 中央アメリカ |
90 | サウジアラビア | 301 | 西アジア(中東・近東) |
91 | リベリア | 276 | 西アフリカ |
92 | セントヘレナ | 258 | 大西洋の島 |
93 | ナウル | 254 | オセアニア |
94 | ドミニカ | 241 | 中央アメリカ |
95 | エジプト | 224 | 北アフリカ |
96 | マヨット | 214 | 東アフリカ |
97 | ガイアナ | 181 | 南アメリカ |
98 | モザンピーク | 169 | 東アフリカ |
99 | ベナン | 117 | 西アフリカ |
100 | チリ | 80 | 南アメリカ |
101 | モンテネグロ | 73 | ヨーロッパ |
102 | マルティニーク | 60 | 中央アメリカ |
103 | シリア | 58 | 西アジア(中東・近東) |
104 | アルバニア | 57 | ヨーロッパ |
105 | ノルウェー | 50 | ヨーロッパ |
106 | バミューダ | 43 | 北大西洋の島 |
107 | ヨルダン | 39 | 西アジア(中東・近東) |
108 | セントクリストファー・ネイビス | 31 | 中央アメリカ |
109 | トケラウ | 29 | オセアニア |
110 | イギリス | 26 | ヨーロッパ |
111 | ガボン | 22 | 中央アフリカ |
112 | トーゴ | 11 | 西アフリカ |
113 | ガンビア | 10 | 西アフリカ |
114 | イスラエル | 10 | 西アジア(中東・近東) |
115 | プエルトリコ | 7 | 中央アメリカ |
116 | 英領ヴァージン諸島 | 5 | 中央アメリカ |
117 | 米領ヴァージン諸島 | 4 | 中央アメリカ |
118 | 英領インド洋地域 | 3 | 南アジア |
119 | 東ティモール | 3 | 東南アジア |
120 | スウェーデン | 2 | ヨーロッパ |
世界計 | 2,560,743 |
資料: GLOBAL NOTE2019年3月28日更新 出典: 国連
赤が東アジア、東南アジア、南アジア、緑が北アメリカ、青がヨーロッパに色づけしています。
マグロは総合してアジアでよく獲られていることがわかります。
反対に、ヨーロッパ、アメリカの漁獲量は高くありません。
アジアのマグロ魚客量、消費量はやっぱり凄いんですね!
ペットフードの原材料は人に消費されないものが主流
基本的にペットフードの原材料の為だけに漁業が成り立つことはないと言っていいので、ペットフードに使われる原材料は、人に使用する部位が取り除かれたものや消費されないものが主流です。
魚でいえば消費されなかった残り、サイズや傷など規格外のもの、切り落とした頭部(カマ)、三枚おろしの中骨部分(中落ちが取れる部分)などです。
マグロの頭部や中骨部分であってもかなり大きく可食部も栄養も豊富なので十分に原材料となります。
こうした原材料は人が消費しないと出ませんので、必然的に漁獲量が高く、消費量も高い国が有効活用するためにペットフードや飼料によく使う国と考えられるようになります。
ヨーロッパやアメリカでは一部の取れる地域での使用があっても、主原材料としてマグロが鶏やターキー、サーモンなどと同じメインに並ぶということは少ないと考えられます。
地域の産業を守る資源の活用
反対に、マグロとは関係がなくなってきますが、その土地土地で獲れる魚があるので、それらが原材料になることは十分にあります。
例えば地域の産業を守るためにも活用されています。どんな場所でもサーモンなど消費量の多い魚ばかりが獲れるとは限りません。こうなると水産業が安定しにくくなります。
ペットフード工場が地元の食材を積極的に利用することで、地域の産業(水産や畜産)を守ります。
「サーモン」など限られた魚ではなくなりますが、種類を問わない、または、ある程度幅を持って仕入れることで仕入れ価格も安く安定させたり、猟師さんも一定の金額が補償されるなどメリットがあります。
もちろん魚自体は新鮮なものですのでペットフードの原材料としては問題はありません。
猫にとってマグロは好物?
これは正解であり不正解であるというのが正しいと思います。
日本のように海が近く、昔から猫が魚を食べていたような国、地域では、猫が人から魚をもらいやすく、食べる機会が豊富だったことから、個体差はありますが好物になり得る環境がありました。
しかし、海のない国や、魚をほとんど食べない国では猫も食べませんので見向きもしないこともあります。
こうしたことから、その国、地域の人が「魚が好きか、または身近か」「魚をよく消費するか」によって、猫の嗜好も影響されると考えられ、全ては猫の近くにいる「人」次第なのかなと感じています。
魚単体でキャットフードで作ることの難しさ
マグロの栄養について考えてみたいと思います。
今年(2019年)弊社では魚のドライフードの開発をしていたのですが、一種類の魚だけで作ろうとすると希望の栄養数値にならなかったということがありました。
魚ならなんでも一緒じゃないんですね!
恥ずかしながら、なんとなくペットフードを製造する時は乾燥、粉末にしてから使用するので、魚なら大きな違いはないのかなと思っていたところがありました。
しかし、魚ならなんでも一緒という訳ではありません。
原材料の組み合わせ方(参考程度にしてください)
魚は部位だけでもカロリーなどかなり違いますし、ペットフードにおいて単体の栄養素はあまり意味がありませんが、マグロの栄養素は以下のようになります。
マグロ赤身100gあたり参考値
エネルギー | 125kcal |
タンパク質 | 26.4g |
脂質 | 1.4g |
炭水化物 | 0.1g |
食塩相当量 | 0.1g |
サーモンの刺身100gあたり参考値
エネルギー | 139kcal |
タンパク質 | 22.51g |
脂質 | 4.51g |
炭水化物 | 0.11g |
食塩相当量 | 0.11g |
鶏肉の100gあたり参考値
エネルギー | 200kcal |
タンパク質 | 16.2g |
脂質 | 14g |
炭水化物 | 0g |
食塩相当量 | 0.1g |
マグロは低カロリー高タンパク低脂質なので補いあってレシピを作る
マグロとサーモンの切り身、鶏肉を比較すると、マグロが低カロリー、高タンパク質、低脂質な食材であることがわかります。
そこで、マグロを大量に使ってキャットフード(ドライフード)作った場合、かなり低カロリー、高タンパク質、低脂質になると予想できます。
このためサーモンをプラスすることで脂質を足すことができるという考え方もできますね。
鶏肉はタンパク質はやや抑えられていますが、エネルギーと脂質も豊富なので、原材料として使用した場合は過剰になったら、栄養素を減らす方向を考えればいいので、比較的作りやすいといえます。
以上は部位も不明確で数値が正確性に乏しいので、考え方の参考程度にしてください。考え方としてはこのように素材を組み合わせていくという解説です。
この他にも当然それぞれの原材料にはミネラルやビタミン、不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸などが含まれていますので、バランスをとって使用します。
これが魚一種類だけで作ろうとしたら、思い描いた栄養素にはならなかったことの解説です。
よく考えれば当たり前なんですが、作ってみるまで意外とそう思えなかったんですよね。それは私が普段料理をしないからかもしれません。
水産関係者はもちろん、料理をする方なら最初からピンときたかも?しれませんね。
ヘルシーなマグロは体重管理用キャットフードにも使いやすいようです
マグロは部位にもよりますが、低カロリー、高タンパク質、低脂質の傾向にありますので体重管理用キャットフードにも使われています。
もちろん一般的な総合栄養食にも使われています。
参考になりましたでしょうか。このように猫にとってマグロは必ずしも好物というわけではなく、お国柄が大きく影響するということです。特に日本ではマグロが身近で大変人気のある食材、原材料となっています。
マグロもだんだんと獲れなくなり、高価になってきていますから、今後の変化が気になるところですね。
まとめ
- 日本の猫に大人気のマグロ
- 必ずしも世界ではマグロは主の原材料になることは少ない
- マグロはアジアで多く獲られ、消費されている
- マグロは部位にもよりますが、低カロリー、高タンパク質、低脂質でヘルシーな食材
- 体重管理用にも使われやすい原材料
私たち日本人に馴染みのあるマグロですが、こうして調べてみると日本を始め、アジア圏にとって馴染みがある食材であることがわかりました。また、低カロリー、高タンパク、低脂質で非常にヘルシーな食材だったんですね。オメガ3脂肪酸も摂取することができ、猫にとって有益な原材料であることがわかりました。