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ヒスチジン(Histidine)とは
ヒスチジンは必須アミノ酸です。ヒスチジンは人の場合でも乳幼児では体内で生成できず、犬猫においても体内で生成することができません。
ヒスチジンは多くの化合物の前駆物質になります。前駆物質とはその化合物が生成する前の段階の物質のこと。ヒスチジンという言葉もギリシャ語で”組織”という意味を持ちます。たんぱく質の構成成分や神経伝達物質として神経機能の補助などを行います。
犬においてヒスチジンが欠乏すると体重の低下、酷いときには死亡する可能性あり
犬にヒスチジンが欠乏すると数日から数週間かけてゆっくりと症状が出始めます。主に血漿、筋肉のヒスチジン、筋肉のカルノシン、体重、ヘマトクリット、血清アルブミンが大幅に減少し、これらに抵抗するために活動を抑え、元気がなくなっていきます。体重の低下をが起こり、最悪の場合死亡します。
参考:Histidine, an essential amino acid for adult dogs
特に子猫においてヒスチジンは成長、造血、白内障予防に不可欠
猫にヒスチジンが欠乏すると白内障になる傾向があります。体重増加量にも影響するため、十分な供給が必要です。
参考:Histidine requirement of kittens for growth, haematopoiesis and prevention of cataracts
ヒスチジンを含む食材
ヒスチジンはマグロ、カツオ、サバ、イワシなど特に赤身の魚類に多く含まれています。鶏胸、豚肉の赤身などの肉類や牛乳、チーズなどの乳製品にも含まれています。
食品名 | ヒスチジン(mg /100g) |
---|---|
黒まぐろ 赤身 生 | 2,500 |
かつお春獲り生 | 2,500 |
きはだ生 | 2,100 |
めばち生 | 1,700 |
まかじき生 | 1,700 |
ぶり生 | 1,700 |
ごまさば生 | 1,600 |
まさば生 | 1,300 |
さんま | 1,200 |
うるめいわし生 | 1,100 |
しろさけ生 | 1,000 |
参考:食品成分表2022(八訂)
ヒスタミンによる食中毒はヒスチジンから起こる
ヒスタミンは、食品中に含まれるヒスチジン(タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一種)にヒスタミン産生菌(例、Morganella morganii)の酵素が作用し、ヒスタミンに変換されることにより生成します。
上記の通り、ヒスチジンにヒスタミン産生菌の酵素が作用することでヒスタミンになります。ヒスチジンが多く含まれる魚などの食品を常温で放置したりするとヒスタミン産生菌が増えてヒスタミンとなり、食中毒を引き起こします。
しかもヒスタミンは熱に強く、加熱工程でも除去することができないので、原材料の時点でヒスタミンができてしまうと食中毒を防ぐことができません。
このようにドライフードにおいても原材料の管理は非常に重要となります。
ヒスチジンのペットフード含有量
AAFCOのドッグフードにおける基準値
AAFCO DOG FOOD NUTRIENT PROFILES BASED ON DRY MATTER
栄養素 | 乾物ベース単位 | 成長期&妊娠期 最小値 | 成犬の維持期 最小値 |
ヒスチジン | % | 0.44 | 0.19 |
参考:AAFCO DOG FOOD NUTRIENT PROFILES(PDF)
AAFCOの基準では子犬、妊娠期は0.44%以上、成犬の維持期は0.19%以上となっています。
AAFCOのキャットフードにおける基準値
AAFCO CAT FOOD NUTRIENT PROFILES BASED ON DRY MATTER
栄養素 | 乾物ベース単位 | 成長期&妊娠期 最小値 | 成猫の維持期 最小値 |
ヒスチジン | % | 0.33 | 0.31 |
参考:AAFCO CAT FOOD NUTRIENT PROFILES(PDF)
AAFCOの基準では子猫、妊娠期は0.33%以上、成猫の維持期は0.31%以上となっています。
まとめ
- ヒスチジンは多くの物質の前駆物質になる
- たんぱく質の構成成分や神経伝達物質になる
- ヒスチジンが欠乏すると最悪死に至る
- ヒスチジンを多く含む赤身魚などを常温で放置するとヒスタミンが生じる
- ヒスタミンは加熱しても失われず、食中毒を引き起こす
多くの重要な物質の前駆物質になるヒスチジン。犬猫にとって必須アミノ酸であり、ヒスチジンが取れなければ最悪死に至ります。総合栄養食を食べていれば気にすることはありませんが、積極的に摂取してもよい栄養素と言えそうです。