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カラギーナンとは
カラギーナン(Carrageenan)は、海藻、特に紅藻類と呼ばれる赤い海藻から抽出される天然の多糖類です。
とくにアイリッシュモス(Chondrus crispus)と呼ばれる海藻がよく知られており、その歴史は人間の食品利用においても古く、プリンやアイスクリーム、ヨーグルト、缶詰食品などに広く使われてきました。
カラギーナンは、水と結合してゲル状になる性質をもつため、食品に粘度や弾力、安定性を与えることができます。
海藻から得られる成分としてはアガー(寒天)やアルギン酸などが挙げられますが、カラギーナンはそのなかでも独特の弾力性と保水性が優れている点が特徴です。
ペットフードの増粘剤としてのカラギーナン
ペットフードで使用されるカラギーナンの目的は、安定化と食感の向上です。
とろみを持たせることで、肉や魚などの固形成分とスープとの分離を防ぎます。それともに猫や犬が食べやすい質感に仕上げることができます。
また、カラギーナンは保存料のように誤解されることもありますが、実際には保存料としての機能はほとんどありません。
ただし水分を均一に保持できることによって、食品の物理的な劣化を防ぐ間接的な役割を果たしています。
カラギーナンの評価と安全性
カラギーナンはFDA(米国食品医薬品局)やEFSA(欧州食品安全機関)などの公的機関によって一定の使用量の範囲内で「安全」とされてきました。
しかし1990年代後半から再評価の動きが強まり、動物実験をもとに炎症や消化器への影響があるのではないかとする研究が発表され始めました。
分解カラギーナンとカラギーナンは別物
ここで混同されやすいのが「分解カラギーナン(Degraded Carrageenan)」という別の物質の存在です。分解カラギーナンは、通常のカラギーナンを酸などで化学的に処理し、低分子化したものですが、これがラットやモルモットに腸の炎症を引き起こすことが確認されています。
つまり、安全性が懸念されているのはあくまでこの分解されたカラギーナンであり、天然由来で食品品質のカラギーナンとは異なります。
しかし飼い主にとってはこの2つの区別がわかりづらく、同一視されやすいのも事実です。ペットフード業界においても、カラギーナンに対して否定的なイメージを抱く人々が増えてきた背景には、こうした情報の混在があります。
カラギーナンが健康被害を引き起こしたという明確な臨床データもありません。
食品添加物としての天然の誤解
カラギーナンは「天然由来」とされる一方で、その精製過程では化学処理が加えられる場合があります。これによって完全な自然食品とは言えない場合があり、これを懸念されるケースがあります。
カラギーナンの代替成分と今後の方向性
特に猫では、消化器官がデリケートな個体が多く、軟便や慢性的な下痢の原因としてカラギーナンが疑われるケースがあります。これがアレルギーではなくても腸の粘膜を刺激することによって、腸内フローラの乱れや栄養吸収効率の低下を起こす可能性があるといわれています。
カラギーナンの代替としては、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、寒天、ペクチン、米粉、バナナスターチなどが挙げられます。
これらは同様にとろみやゲル化を目的としながらも、よりナチュラルで腸にやさしいとされる成分です。ただし、それぞれの成分にも特性があるため、すべての犬猫に最適というわけではありませんので、何か問題を感じたときに、どんな増粘剤が使われているか製品ごとに確認してみて、愛犬愛猫にあったものを選ぶとよいのではと思います。