ドライフードの製造コストを考える
マッサンならどんなキャットフードを作りますか?
実はこの話は何度かご質問をいただいたことがあり、結果的には意味のないものになってしまうことが予想されますがお話します。
まずはコストの話からになりそうです。グレインフリーで製造し、販売価格は1.5kgで3~4,000円までとします。販売経験上この辺りが最も製品と価格のバランスが取れているように思います。
1.5kgで3~4,000円より安くはできませんか?
一番コストが高い原材料が肉なので、肉の配合量を落とすことで価格を落とすことができます。後はアジアで作ることで多少は落とせるかもしれません。
キャットフード製造にどの位のコストがかかるのでしょうか。
例えばですがキャットフードのMOQ(最少受注単位)が2トンで2kgの袋が1,000袋分だとしましょう。3,000円で1,000袋販売した場合売上げが300万円です。この中には以下のようなコストが含まれます。
- 原価(原材料や製造コスト)
- パッケージコスト
- 倉庫(保管費用、場所代、梱包費用など)コスト
- 配送コスト
- カスタマーサポートのコスト
海外工場の場合は追加で輸入コスト、輸送コスト、保管コストがかかってきます。プラスこれらを行う人件費ですね。それに加え、皆さんに知られなければ販売できませんから、広告コストがかかります。
上記の1,000袋程であれば倉庫コストは抑えられますが、その他は売れても売れなくてもかかってくるコストになりますので、売上の300万円は消えてしまうと思います。
想像以上にコストがかかっていますね!
海外からの輸入も船便のドライコンテナが一般的ですが、リーファーコンテナという一定の温度を保てるコンテナを使用したら2倍、航空便なら3倍と輸送費もかけようと思えばどこまでもかかります。
例えばキャットフードを入れる袋自体の製造はMOQ(最少受注単位)で1万袋位作ることになるでしょう。レシピから販売までの全てが整えば後は同じことを繰り返すだけですから、利益が出る位販売ができれば、3分の1程度がコストになるのではないでしょうか。事故等のリスクは含まないとします。
原材料だけにコストをかけていられないのですね・・・グレインフリーにすることがいかにコストがかかるか透けてえるようです。
因みに国内で製造する場合には製造コストが倍近くなってしまいます。その代わりに海外と比べるとMOQがずっと小さいというメリットがあります。
もし作る場合の現実的な原材料は?
コストをふまえて、どの位のものが現実的なのでしょうか?
やはり継続して与えられる価格を意識しつつ、よりいいものを与えたいと考えます。原材料はグレードの高いものを使用し、チキンと魚介類両方でといきたいところですが、漁獲量なども影響しますので、価格の安定性を考えるとチキンをメインとしたものになると思います。ターキーもヘルシーなのでいいと思います。
同じ価格で提供し続けるためには原価に左右されないようにレシピを考えていかなくてはなりません。両方を入れると仕入れ先も増えますし、どちらかの価格上昇などが起こると価格の維持が難しくなったり、質を落とさなくてはならなくなりますね。片方だけにしたからといって質が落ちるわけではありませんから。
原材料の配分はどうしますか?
米、麦、とうもろこしは使いません。穀物不使用のグレインフリーにしたいところです。
日本では広い環境で思う存分運動ができないのでエネルギー摂取過多になりやすいため、摂取カロリーが多くならないようにインドア、アウトドアなど飼育環境で給餌量を設定できたらいいですね。
サーモンなどお魚は作りませんか?
魚介類を多く配合するとどうしてもカルシウム量に加え、マグネシウム量が多くなってしまいます。この辺りで満足の行くレシピが作れればサーモンも作りたいですね。日本の猫はやはり魚が好きですし、個人的には魚の方が作りたいです。
尿路結石の相談は良く受けるので、AAFCOの栄養基準から考えるとカルシウム、リン、マグネシウムの配合は1.2:1:0.08程度でリンが少し少なめを守りたいところですね。
保存料や油脂はどうしますか?
保存料は天然のハーブやクエン酸、ビタミンEからにしたいところです。一番多いのはローズマリーの抽出物ですね。油脂は新鮮な肉原材料を使った場合、同じ原材料由来の油脂で作れるということを確認しています。
マッサンが作るキャットフードはこれ!
ハーブや果物などで各社違いをはかっていますが、マッサンならどうしますか?
2種類の案があります。まずはシンプルな構成のキャットフード。最近は主原料以外に野菜やハーブを配合したキャットフードが主流です。この野菜やハーブ、スパイスがアレルギーや好き嫌いに繋がり、食べないケースがあります。このことからできる限りシンプルな構成で、アレルギーなどにできる限り結びつかない原材料で作りたいのがひとつですね。
もうひとつは、できる限り猫が自然界から摂取するであろうハーブ、フルーツ、野菜、スパイスをバランスよく含んでいるキャットフードです。おそらく30種類は超えてくるでしょう。これ以外は肉原料と乳酸菌、天然の抗酸化原料で作りたいと思います。
じゃがいもやさつまいもなどはどうですか?
炭水化物と繊維をどこまで配合するかは悩ましいですが、安価で吸収ができる貴重な栄養源なので、コストと相談して、ある程度は入れることになるかもしれませんね。原材料としても安価なので、高品質な肉とサポート的にさつまいもやじゃがいもを使用したグレインフリーを作りたいですね。
各社企業努力をしていることがわかる結果に
各社色々考えて企業努力をしているんですね。プレミアムキャットフードが高い理由もわかってきましたが、もう少し安くならないんでしょうか。
各工場と話したのも、私もプレミアムキャットフードが高く感じていたからです。実際に作ってみようとした場合、予め大量のキャットフードを販売できる販売網をもっていればいいのですが、そうではない場合は輸入費や保管費まで考慮すると現実的な価格だということがわかりました。
つまりマッサンが作るとしても現在販売しているものと同じような価格になるということですか?
原材料やオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸、タウリンの配合量など細かな違いはあったとしても、価格自体は大差ないものになるでしょう。私には自前の販売網はありませんから尚のことです。
上記で話した、できる限りシンプルな原材料にすることで、原料費を抑えた分価格も少し落とせるかもしれませんね。ふたつめのレシピの場合はそれほど安くはできなさそうです。
どんなメーカーも企業努力をした結果なんですね。
そう思います。いつか私も世界のいいキャットフードを見つけて輸入や、オリジナルキャットフードの販売など行いたいところです。
※マッサンオリジナルのキャットフード、ドッグフードが販売開始しています!
まとめ
- オリジナルキャットフードを作るためのコストは原材料だけではない
- プレミアムキャットフードは3~4,000円程度が妥当
- 各社企業努力をしている
マッサンのように知識があっても自分で作ることは難しいんですね!作ってくれたら買うのに!という人は私だけじゃなさそうな気がします。