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シナモンとは
犬や猫にシナモンを与えてはいけないでしょうかという質問がありました。
シナモンとはクスノキ科ニッケイ属の樹木の樹皮を乾燥してできる香辛料です。樹木の皮を乾燥させて細長く巻いたものがシナモンスティックで、粉状にしたパウダーもあります。
シナモンの一番の特徴は香りです。スパイシーな香りでありながら甘さを感じ、爽やかさも感じます。その香りを生かして紅茶、コーヒー、パイ、パン、お菓子など独特な香りを生かして様々な食品で使われています。
お菓子やパンなどは愛猫愛犬に与える機会があるかと思いますので紹介したいと思います。
犬猫にシナモンを与えても大丈夫?
そのまま与えることは避けた方がよいと思いますが、絶対に与えてはならないということでもありません。
シナモンには「クマリン」という芳香成分が含まれています。クマリンには肝毒性があり、大量に摂取すると肝臓疾患を引き起こすと言われています。
これが与えてはならないといわれる理由ですが、しかしシナモンにおけるクマリンの含有量は少なく、大量に摂取しなければなかなか一日摂取許容量(ADI)までの摂取は難しいこと、またクマリンによる健康効果も認められています。
シナモンをそのままおやつのように噛ませたり、サプリとして別途給与するといったことは避けるべきでしょう。
シナモンに含まれる「クマリン」は有毒?
東京都保健医療局でも平成19年時点で「シナモン含有食品中のクマリンについて」という資料を公表し、シナモンを大量に摂取するような偏った食事に対して注意喚起を行っています。
肝臓疾患を引き起こすと以下のような症状が起きます。
- 元気喪失、食欲減退
- 体重減少
- 嘔吐・下痢
- 黄疸
- 涎
クマリンの健康効果
クマリンの肝毒性についてが注目されがちですが、クマリンは抗酸化物質のポリフェノール酸系に分類される芳香成分です。
シナモンだけでなくセリ科、ミカン科、マメ科など様々な植物に含まれている成分です。
- 抗酸化作用・活性酸素除去
- 抗菌作用
- 抗血液凝固作用(血液サラサラ)
- むくみ防止
- リラックス
- 睡眠促進
研究としてラットに10mg/kgのクマリンを投与した結果、抗酸化力によって血液や網膜保護作用を持つことがわかっています。
また肝障害についていわれていますが、研究では肝細胞にクマリンを投与した結果、肝臓の線維化の抑制効果が見られ、肝臓保護効果があることも示されています。
参考:Antifibrotic activity of coumarins from Cnidium monnieri fruits in HSC-T6 hepatic stellate cells
上記からも摂取する量が重要であることが推測できます。
何事もほどほど…にということですね。
シナモンが記憶力、認知力が向上する
最新の40の研究のうちほとんどの研究でシナモンを摂取することで学習・記憶を著しく改善することが確認されています。
まだ確定的なものではなく、更に研究を行う必要があると締められていますが、認知機能障害の予防、軽減に役立つ可能性が報告されています。
参考:Cinnamon and cognitive function: a systematic review of preclinical and clinical studies
シナモンに含まれるクマリンの含有量
シナモンには代表的な2種類があります。ひとつがスリランカや南インドなどが原産のセイロンシナモン、ふたつめがインドシナや中国が原産のカシアや肉桂(にっき)です。
産地については日本国産のシナモンや肉桂もありますし、必ずしも生産地域が限定されているわけではありませんが上記が主たる産地となっています。
セイロンシナモンが平均13.7ppm、カシアが平均3257.5ppm、中でもベトナム産カシアが平均 5425.0ppm で他産地と比較しても高いという調査結果があります。
1ppmは100万分の1で例えば1トンのうち1g。パーセントで表すと0.0001%ですので、セイロンシナモンが0.00137%、カシアが0.32575%、ベトナム産カシアで0.5425%です。
クマリンの耐容一日摂取量
ドイツ連邦リスクアセスメント研究所では2006年にクマリンの耐容一日摂取量(TDI)を0.1mg/kg/dayと設定しました。耐容一日摂取量(TDI)とは一生をかけて毎日摂取した場合の1日摂取限度量です。
例えば50kgの人間で5mg/日です。
50kgの人間の場合 | シナモン耐容一日摂取量(TDI) | クマリン含有量の平均 | シナモンをTDIまで摂取した場合のクマリン摂取量 |
---|---|---|---|
セイロンシナモン | 346580 mg | 0.00137 % | 4.748146 mg |
カシア | 1530 mg | 0.32575 % | 4.983975 mg |
ベトナム産カシア | 920 mg | 0.5425 % | 4.991mg |
1番使われているカシアの場合でクマリン含有量が0.32575%程度とした場合、カシア100mg中でクマリン含有量は0.32575mgです。耐容一日摂取量に合わせると概ねカシア1530mg(1.53g)を摂取すると4.983975mgとなり、約1日の耐容摂取量となります。
この通りに各シナモンの 1 日許容量を試算するとセイロンシナモンは 364.58g、カシアは 1.53 g、ベトナム産カシアは 0.92g となります。
普通に生活していたらTDIを超えることは考えにくい
平成16年国民栄養調査の食品群別栄養素等摂取量では「香辛料・その他」の1日辺りの摂取量は0.2gとあります。これが全てシナモンだったと仮定しても1日許容量を超えません。(※摂取した香辛料の全てが最大値であったベトナム産カシアだった場合1日許容量を1g程度超える)
つまり普通に生活していたらシナモン摂取量が多くなることはないということですね。
このように通常の生活の中で毎日シナモンを1g以上食べるという生活は考えにくく、意識して摂取しないことには難しい量であることがわかります。
シナモンを使ったペットフード大丈夫?
ドッグフードやキャットフードにシナモンが使われているものがあります。それらはシナモンによる風味や効果効能を考慮して、適切に計算された量を使用しています。
でなければ肝疾患の犬猫が大量に出てしまうという結果となり、ペットフードメーカーとしても使用して良いことがありません。
長年の研究、製造、販売実績から得られる経験や製造方法によって成立しています。
犬猫の耐容一日摂取量
当然人と犬猫では同様には考えられないかと思いますが、人用の耐容一日摂取量を用いて、4kgの犬猫でクマリンの耐容一日摂取量を0.4mg/日と仮定して計算してみます。
すると以下の通りとなります。
4kgの犬猫の場合 | シナモン耐容一日摂取量(TDI) | クマリン含有量の平均 | シナモンをTDIまで摂取した場合のクマリン摂取量 |
---|---|---|---|
セイロンシナモン | 291.9 mg | 0.00137 % | 0.399903 mg |
カシア | 122 mg | 0.32575 % | 0.397415 mg |
ベトナム産カシア | 73.7 mg | 0.5425 % | 0.3998225 mg |
例えば4kgの犬猫の給与量が60g位のキャットフード、ドッグフードがあり、カシアが0.1%(60mg)使われていたとします。60mg中のクマリンは0.19545mg程度と考慮すれば、クマリンの耐容一日摂取量の約半分と考えることができます。
シナモンの香りは犬猫には強く、多く使うことはできない
シナモンを用意してみるとわかりますが、手作りフードやドライフードに対してシナモンを1%程度(100gなら1g。小さじ半分ほど)使用するとシナモンの香りが強く、鼻の良い犬猫には強い香りになるでしょう。香るかどうかの使用なら0.1%程度です。
「それほど少ないのなら入れる意味がないのではないか」という意見もあるのですが、胡椒などの香辛料と同様で味、香りの強いものはパッパッと振りかけるだけで違いを実感できます。
キャットフード、ドッグフード製造では微々たるものの組み合わせで味や香りの複雑さを作ることが味の深みとなり、食い付きにも影響してきます。
シナモンの効果効能
血流の改善
冷え性改善、関節痛、腹痛、下痢、月経などの痛み
毛細血管の修復
毛細血管は壁細胞と内皮細胞の二層構造ですが、年齢を重ねると徐々に二層がはがれて離れていき、隙間ができてきます。シナモン含有成分のシンナムアルデヒドは壁細胞をはがれにくくさせる受容体Tie2を活性化させる作用があり、ぴたっと接着するように働きかけます。
食欲不振、胃の痛みを改善
胃薬としての作用があり、胃腸薬などでも使用されます。
解熱作用
発汗、解熱作用があり、葛根湯や桂枝湯などでも使用されます。
どのようなものでも使用する量が重要であり、健康効果を引き出せるように作られているのですね。シナモンによる記憶力、認知力の向上にも期待したいところです。