犬猫用のミネラルサプリについて
総合栄養食にはすでに必要なミネラルが含まれており、さらにカルシウムとリンのように、量だけでなくバランスが重要なものもあります。
今回は、総合栄養食を食べている犬猫にミネラルサプリメントを追加するとき、何を確認すればよいのかを解説します。
まず「追加する必要があるか」を考える
総合栄養食は、対象となる成長段階の犬や猫が必要とする栄養を満たせるように設計されています。
そのため、健康な犬猫が適切な総合栄養食を食べている場合、ミネラルを追加すれば必ず健康にプラスになるわけではありません。
AAFCOも、ライフステージに適した完全でバランスの取れた食事を食べている健康な犬猫では、一般的に栄養サプリメントは必要なく、追加によって一部の栄養素の上限を超える可能性があると説明しています。特にセレンは、過剰に使用すると毒性が問題になる栄養素の例として挙げられています。
ミネラルそのものの種類や働きについては、下記の記事で詳しく解説しています。
ミネラルは「量」だけでなくバランスも重要
ミネラルは、ひとつの栄養素だけを見ればよいとは限りません。
ほかのミネラルや原材料との組み合わせによって利用され方が変わることがあるため、全体の量とバランスを考える必要があります。
代表的なのがカルシウムとリンです。例えば犬用の栄養基準では、それぞれの量だけでなく、カルシウム:リン比にも1:1~2:1という範囲が設けられています。
そのため、カルシウムだけをサプリメントで追加すると、カルシウム自体が最大量を超えていなくても、リンとのバランスが崩れる可能性があります。
カルシウムとリンの働きや適切なバランスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
犬では最大量が設定されているミネラルがある
AAFCOの犬用栄養プロファイルでは、一部のミネラルに最大量が設定されています。
| 項目 | 最大量/1,000kcal ME |
|---|---|
| カルシウム | 6.25g ※大型犬になる子犬用フードでは、カルシウムの最大量は4.5g/1,000kcal MEです。 |
| リン | 4.0g |
| カルシウム:リン比 | 2:1 |
| ヨウ素 | 2.75mg |
| セレン | 0.5mg |
一方、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、亜鉛などには、AAFCOの犬用栄養プロファイル上の最大量は設定されていません。
ただし、最大量がない=どれだけ摂っても安全という意味ではありません。上限を設定するための十分なデータがない栄養素もあるためです。
カルシウムサプリを追加するとどうなる?
実際の総合栄養食を例に考えてみましょう。
ウィリアムドッグフードでは、カルシウム1.2%、リン1.0%、代謝エネルギー約397.8kcal/100gと公開しています。
体重10kgの健康な成犬では、1日の必要カロリーは約470~590kcalが目安とされています。ここでは計算しやすいよう、1日500kcal食べる場合を例に考えてみましょう。
1日に食べるフード量を計算
100g ÷ 397.8kcal × 500kcal = 約126g
フードから摂るカルシウムとリンを計算
カルシウム:126g × 1.2% = 約1.51g
リン:126g × 1.0% = 約1.26g
カルシウム:リン比
まず、フードだけを食べている場合は、
1.51g ÷ 1.26g = 約1.2
なので、この例でのフードだけのバランスは約1.2:1です。
ここにカルシウムを約1.0g追加すると、
カルシウム:1.51g + 1.0g = 約2.51g
リン:約1.26g
となります。
このときのカルシウム:リン比は、
2.51g ÷ 1.26g = 約1.99
となるため、カルシウム:リン比は約2:1になります。
つまり、カルシウム単体の最大量に達する前に、カルシウム:リン比の上限に達する計算です。
このように、ミネラルサプリメントでは、単体の摂取量だけでなく、ほかのミネラルとのバランスも確認する必要があります。
猫にはミネラルの最大量がない?
犬と猫では、ミネラルの基準が異なります。
AAFCOの猫用栄養プロファイルでは、各ミネラルの最低量は示されていますが、最大量は設定されていません。
ただし、これは「どれだけ追加しても安全」という意味ではありません。最大量がない理由には、毒性量について十分な情報がないこともあります。
そのため猫では、犬のカルシウムのように、「最大量 − フードからの摂取量 = サプリメントを考える目安」という計算を、この栄養基準だけから行うことはできません。
特にマグネシウムやリンなどは、健康状態や食事全体との関係も重要になるため、自己判断で追加しない方がよいでしょう。
参考:AAFCO「Revised AAFCO Nutrient Profiles」
総合栄養食で足りるならなぜサプリメントが売られているの?
健康な犬猫が適切な総合栄養食を食べている場合、基本的には必要なミネラルを食事から摂取できます。
このため、健康な犬猫の場合はほとんどのケースで使う必要はないものですが、それでもサプリメントが販売されているのは、すべての犬猫が同じ食事ではなく、食事内容や健康状態、使用目的によって特定の栄養素を補う場合があるためです。
日本のペットフード表示では、特定の栄養成分を調節・補給することなどを目的とした製品は、総合栄養食とは別の「その他の目的食」に分類されます。
つまり、サプリメントは総合栄養食に必ず追加するものではなく、必要に応じて特定の栄養素を補うためのものです。
具体的には病気などでミネラル補給の必要があったり、手作り食でミネラルが足りない場合に補うといったケースがあります。
成長期や療法食では特に自己判断で追加しない
ミネラルサプリメントで特に注意したいのが、成長期の犬猫や、療法食を食べている犬猫です。
たとえばカルシウムは、成長期の骨格形成に欠かせない一方、大型犬になる子犬では過剰摂取が骨格の発達に悪影響を及ぼすことが知られており、AAFCOでも通常より厳しい最大量が設定されています。
また、療法食では病気に合わせてミネラル量が調整されている場合があります。
「不足が心配だから」とサプリメントを追加すると、療法食で意図的に調整している栄養バランスを変えてしまう可能性があります。
こうした場合は、サプリメントを追加する前に獣医師へ確認しましょう。
参考:Nutritional Requirements of Small Animals
まとめ
総合栄養食には、犬や猫に必要なミネラルが含まれています。サプリメントを使うときは、フードやおやつも含めた1日の総摂取量で考えることが大切です。
また、ミネラルは単体の量だけでなく、カルシウムとリンのようにバランスも重要です。
最大量が設定されていないミネラルも、無制限に摂ってよいわけではありません。
サプリメントを追加するときは、食事全体の量とバランスを確認して使いましょう。





