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ペットフード等における医薬品的な表示
日本には飼料関係法令の通知で「ペットフード等における医薬品的な表示」があります。
効能効果についての規制が記されていて、例えば弊社のペットフードのような総合栄養食の場合は、効能効果をうたうことはできません。
また、獣医師以外は獣医師法により、医療、診療に関わる部分でのアドバイスを行うことはできません。
そもそもペットフードメーカーは飼い猫を直接見る機会はありませんので、医療や診療に関することはアドバイスできないですけどね。こうしたことから例えば弊社で出来ることはペットフードの与え方をお伝えしたり、食べないなどのケースごとのご相談を受けたり、あくまでペットフードに関するご質問はアドバイスできるといったこととなります。
知っていることとアドバイスしていいことは別なんですね!
例を挙げますと、弊社にも尿路結石ですがロニーを与えて大丈夫ですか?といったご質問を頂くのですが、こうしたケースにはお答えができません。
これと同じように表示にもきちんと制限があります。療法食の場合であっても、規則に則って表示する必要があります。
特に医薬品的な効能効果は医療も関係してきますので更に厳しくなっています。以下に療法食に関する部分を紹介します。
(2)犬、猫等のペットフードの「食事療法(又は食餌療法。以下同じ。)」等に関する表現
犬、猫等のペットフードのうち、栄養成分の量や比率などを調節することによって、特定の疾病等に対していわゆる食事療法として使用されることを意図して作られたものについては、栄養成分の量や比率などがどのように調節されているのかを具体的に明示した上で、以下のような範囲で、疾病名や動物の身体の構造又は機能について表示することは、直ちに医薬品的な効能効果とは判断しない。
例えば、製品のマグネシウム含有量を低く抑えること等により、食事療法として尿石を形成しにくくしていることを標ぼうすることは、直ちに医薬品的な効能効果とは判断しない。また、尿のpHについても、製品に含まれるマグネシウム含有量を低く抑えること等により、食事療法として動物が摂取するミネラルのバランス等を調節し、尿のpHをコントロールすることについては、直ちに医薬品的な効能効果とは判断しない。
ただし、この場合、当該製品が一般に犬、猫等の餌として認識されるものであることが明確な場合に限ることとし、いわゆるペット用サプリメントと呼ばれるもののように通常の餌に添加して使用するものや錠剤のような形態のもの等その製品自体が餌として認識されがたい形態、使用方法のものについては、医薬品との誤認を招く可能性があることからこのような表現は認めないこととする。
また、「処方食」は医薬品的な表現と判断されるが、「食事療法」として使用されることを意図しているものについては、「療法食」、「食事療法食」、「特別療法食」等という表現を使用することは差し支えない。
なお、疾病名や動物の身体の機能を商品名として使用することは、疾病の治療、予防等若しくは動物の身体の機能に影響を及ぼすことを暗示することとなるため適切でない。
なんとなく病気用のペットフードが療法食って思っていましたが、こうした規則があるんですね!
表示例
これだけでは具体的にどのような表記までがOKかがわからないため、具体例も公表されています。こちらを参考にパッケージやホームページに表示する内容を決定していきます。
直ちに医薬品的な効能効果とは判断されない例:
- 食事療法が必要な〇〇〇(疾病名)の動物に給与することを目的として〇〇(成分名)と〇〇(成分名)の含有量を調整した犬用のフードです。
- 〇〇(機能)が低下した動物にも安心して給与できるように、〇〇(成分名)の含有量を低く配合した猫用の食事療法用フードです。
- この製品は〇〇病の犬、猫に給与することを目的として特別に〇〇(成分名)の含有量を調整された食事療法食です。
- この製品は〇〇不全の犬、猫のためにリン及びタンパク質含有量を下げるなど内容成分を特別に調整した食事療法食です。
- リン含有量を制限することで〇〇症を栄養学的に管理するための特別療法食です。
- 脂肪酸比率を調節し栄養学的に細胞レベルで〇〇症を管理するための食事療法食です。
- 〇〇不全を悪化させる〇〇症を考慮して、リン含有量を制限した療法食です。
- 減量・ダイエットを必要とする犬、猫のために、カロリーを低く抑えて調整した療法食です。
- 本製品はマグネシウム含有量を制限した〇〇症の猫用の療法食です。
- 本製品は結石が形成されにくくするために〇〇の含有量を低く調節した食事療法食です。
- 本製品は尿のpHを酸性側に傾けるように〇〇の含有量を調節した食事療法食です。
等
医薬品的な効能効果と判断される例:
- リン含有量を制限することで、〇〇疾患の進行の遅延をサポートします。(理由:疾病の予防・治療を標ぼう)
- 本製品は皮膚疾患の回復補助に考慮して〇〇(成分名)及び抗活性酸素物質を配合しています。(理由:疾病の治療を標ぼう)
- バランスのとれた栄養で赤血球の生成をサポート(理由:身体の機能に対する具体的作用を標ぼう)
- 〇〇(原材料名)は〇〇、〇〇(成分名)等を含み関節炎の症状を軽減することが知られています。(理由:疾病の治療を標ぼう)
- 本製品はマグネシウム含有量を制限することにより〇〇結石症の症状を軽減します。(理由:疾病の治療を標ぼう)
- グラフのとおり、化学療法とこの製品を併用することにより、生存期間が改善されました。普通食と比較すると54%も延長しています。(理由:疾病の治療を標ぼう)
等
療療法食でも医薬品的な効能効果と判断される表記はNGなんですね!
療法食は薬などの医療品ではありませんので、病気を治すものではないからです。あくまで治療を補助する目的のフードです。
療法食の使用は、獣医師が判断し、処方した薬と合わせて療法食を進められたら使用するのが一般的です。(様子見で薬の処方がない場合もあります)
自分の診断で勝手に使用するのは問題がありますか?
療法食は栄養バランスが病気などに合わせて変えられています。このため、健康な猫や病気違いで使用してしまうと、特定の栄養に過不足が生まれる可能性がありますので、療法食の自己判断での使用はされない方がいいと思います。
療法食の具体例(下部尿路疾患)
療法食といえばロイヤルカナンといわれるほど充実した品揃えを誇りますので、具体例として紹介したいと思います。
まず最も多いと考えられる「下部尿路疾患」に合わせた療法食ですが、この下部尿路疾患だけで16もの種類が揃っています。
ドライ
ユリナリー
ユリナリーS/O ドライ | 下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症) |
ユリナリーS/O+CLT ドライ | 下部尿路疾患(特発性膀胱炎、ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症) |
ユリナリーS/O エイジング7+ + CLT ドライ | 下部尿路疾患(特発性膀胱炎、ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症) |
ユリナリーS/O オルファクトリー ドライ | 下部尿路疾患で香りに食欲を刺激される猫 |
ユリナリーS/O オルファクトリー ライト ドライ | 下部尿路疾患で香りに食欲を刺激される猫、肥満ぎみの猫 |
pHコントロール
pHコントロール0 ドライ | 下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症) |
pHコントロール1 フィッシュテイスト ドライ | 下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症) |
pHコントロール2 ドライ | 下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症) |
pHコントロール オルファクトリー ドライ | 下部尿路疾患で香りに食欲を刺激される猫、肥満ぎみの猫 |
pHコントロール+CLT ドライ | 下部尿路疾患(特発性膀胱炎、ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症) |
pHコントロール+満腹感サポート ドライ | 下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症)で減量を必要とする猫 |
トリーツ
ユリナリーS/O トリーツ | 猫用 ユリナリーS/Oなどによる食事療法時のトリーツ |
ウェット
ユリナリーS/O ウェット パウチ | 下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症) |
ユリナリーS/O ライト ウェット パウチ | 下部尿路疾患で肥満ぎみの猫 |
ユリナリーS/O エイジング7+ + CLT ウェット パウチ | 下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症) |
タブ
DL-メチオニン・タブ | 下部尿路の健康維持に |
これだけあると他社も太刀打ちできないですね…!
世界的な企業だからこそできる充実の商品展開
この商品の充実は世界的なペットフード企業のMARS(ロイヤルカナン)だからこそできるとも言えそうです。
これだけの種類があれば販売が思わしくないものもあるはずです。そうした場合、中小企業では売れない商品の在庫を持ち続けるということは本当に難しいことだからです。
また、療法食はそもそも治療の補助に使われるものですので、1つの症状に対して1つだけの販売ではなく、こうして細分化された商品を揃えることこそ療法食に必要なことといえるかもしれません。
こうした体制こそが猫の健康維持や、将来に渡って猫の健康を増進していくことに繋がっていくものだと思います。弊社もこうした姿勢を見習っていきたいものです。
これだけ細分化されているとどれを与えていいのかわからず、獣医師に聞かないと与えるのは難しいですね!
それも非常に重要な点ではないかなと思います。自己判断では判断を誤ってしまう可能性もありますから、より専門性を必要とする食事となります。
この他にもロイヤルカナンには胃腸の健康、消化器、除去食試験、関節、腎疾患、皮膚被毛、体重維持に関する療法食も揃っています。
表示例と見比べて理解を深めよう
話を元に戻しますと、表示に関してはこうした商品をもとに、表示例も合わせて見てみると、療法食と総合栄養食の表示可能範囲の違いの理解もより深まるかと思います。
まとめ
- ペットフードには表示していい範囲が決められている
- 療法食であっても医薬品的な表示はNG
- 療法食は医薬品ではなく、あくまで治療を補助するフード
- 充実した療法食が、猫の健康や将来に渡って健康を増進していく
療法食はあくまで治療を補助する目的のものであり、医薬品など治療を行うものではないことがわかりました。なんとなく病気になると療法食を与えて治るようなイメージがあるかもしれませんが、それは間違っていますので必ず獣医師に相談のもと使用するようにしましょう!