MCS(マッスルコンディションスコア)という言葉をご存じですか?
BCS(ボディコンディションスコア)は聞いたことがあっても、MCSは初めてという飼い主も多いでしょう。
日本ではBCSほど一般には知られておらず、動物病院でもMCSについて説明される機会は多くありません。この記事では、MCSとはどのような指標なのか、BCSとの違いや筋肉量を確認する重要性について分かりやすく解説します。
MCS(マッスルコンディションスコア)とは?
世界小動物獣医師会(WSAVA)の栄養評価ガイドラインでは、BCSとMCSをあわせて評価することが推奨されています。
それでは、MCSとはどのような指標なのか見ていきましょう。
筋肉量を評価する指標
MCS(マッスルコンディションスコア)は、犬や猫の筋肉量を評価するための指標です。
WSAVAでは、筋肉量を「正常」「軽度の筋肉減少」「中等度の筋肉減少」「重度の筋肉減少」の4段階で評価する方法を提唱しています。
筋肉量は加齢や病気、栄養状態などによって少しずつ変化するため、健康管理や栄養評価の一つの指標として活用されています。
どこを見て評価する?
MCSでは、筋肉が減少すると変化が現れやすい部位を見たり触れたりして評価します。
主に確認するのは、頭(側頭筋)、肩甲骨、背骨、腰、骨盤です。これらの部位で筋肉の厚みや骨の触れやすさを確認し、筋肉量が維持されているかを判断します。
長毛種や体脂肪が多い犬や猫では、見た目だけでは筋肉量を判断しにくいため、触診も重要になります。
BCSとMCSは何が違う?
BCSは体脂肪、MCSは筋肉量
BCS(ボディコンディションスコア)とMCS(マッスルコンディションスコア)は、どちらも犬や猫の体の状態を評価する指標ですが、評価しているものは異なります。
BCSは、体脂肪の付き具合を評価し、太りすぎや痩せすぎを確認する指標です。一方、MCSは筋肉量が適切に維持されているかを評価します。
つまり、BCSは体脂肪、MCSは筋肉量を確認する指標であり、どちらか一方だけでは体の状態を十分に把握することはできません。
BCSが標準でも筋肉量は分からない
BCSが標準だからといって、筋肉量まで適切とは限りません。
例えば、シニア犬・シニア猫では、加齢によって筋肉が少しずつ減少する一方で、体脂肪は維持されたり増えたりすることがあります。その結果、体重やBCSは変わらなくても、筋肉量だけが減少している場合があります。
このような変化は、体重やBCSだけでは気づきにくいため、筋肉量を評価するMCSをあわせて確認することが重要です。
なぜMCSはBCSほど知られていないのか
MCSは犬や猫の健康状態を把握するうえで重要な指標ですが、BCSほど一般には知られていません。その理由は、MCSの重要性が低いからではなく、BCSとMCSが普及してきた背景の違いにあります。
BCSの方が普及した理由
BCSが広く普及した背景には、犬や猫の肥満が大きな健康問題として注目されてきたことがあります。
肥満は関節疾患や糖尿病など、さまざまな病気のリスクを高めることが知られており、適正体型を維持する重要性が広く認識されるようになりました。そのため、体脂肪の状態を評価するBCSは、健康診断や診療でも広く活用されています。
また、BCSは肋骨の触れやすさや腰のくびれなどを確認して評価するため、比較的分かりやすく、自宅でも体型の目安として確認しやすいことも普及した理由の一つです。
MCSは比較的新しい考え方
一方、MCSはBCSに比べると新しい評価法です。
WSAVAが栄養評価ガイドラインの中でMCSを取り入れ、BCSとあわせて評価することを推奨したのは2011年です。それ以前は、体型評価といえばBCSが中心で、筋肉量まで評価する考え方は現在ほど一般的ではありませんでした。
また、MCSは頭や背骨、骨盤などを実際に触れて筋肉量を確認するため、BCSより評価に慣れが必要です。見た目だけでは判断しにくいことも多く、飼い主への認知や動物病院での普及は、現在もBCSほど進んでいないのが現状です。
しかし近年では、高齢犬・高齢猫の増加や、筋肉量が健康寿命や病気の経過に関係することが分かってきたことから、MCSの重要性はますます高まっています。
動物病院ではMCSを見てもらえる?
MCSは国際的なガイドラインで推奨されている評価方法ですが、実際にどの程度実施されているかは動物病院によって異なります。
病院によって対応は異なる
BCSは、健康診断や診察の際に確認している動物病院が多く、体型管理の指標として広く活用されています。
一方、MCSについては、すべての動物病院で日常的に評価されているわけではありません。栄養管理に力を入れている病院や、高齢の犬猫、慢性疾患の診療が多い病院では確認されることがありますが、カルテに記録しない場合や、必要に応じて評価する場合もあります。
そのため、「BCSは確認しても、MCSは実施していない」という動物病院も少なくありません。
気になるときは相談してみよう
愛犬・愛猫の筋肉量が気になる場合は、診察や健康診断の際に獣医師へ相談してみましょう。
例えば、「筋肉量も確認していただけますか?」と伝えれば、MCSを含めて評価してもらえる場合があります。
特に、シニア犬・シニア猫や、腎臓病、心臓病、がんなどの慢性疾患がある犬や猫では、筋肉量の変化が健康状態に影響することがあります。そのため、体重やBCSだけでなく、MCSもあわせて確認することで、より細かな体の変化に気づきやすくなります。
すべての動物病院でMCSを実施しているわけではありませんが、気になる場合は相談してみることが大切です。
自宅でも筋肉量の変化は確認できる?
MCSは本来、獣医師などが見た目や触診を組み合わせて評価する方法です。しかし、自宅でも日頃から愛犬・愛猫の様子を観察することで、筋肉量の変化に気づくきっかけをつくることはできます。
ただし、これは病気や筋肉量を診断するものではなく、普段との違いに気づくためのセルフチェックとして考えましょう。
体を触って確認する
日頃から体を触る習慣をつけると、筋肉量の変化に気づきやすくなります。
例えば、背骨や腰、太ももの筋肉を触ったときに、以前より骨が目立つようになったり、筋肉の厚みが薄く感じられたりする場合は、筋肉量が減少している可能性があります。
一度だけの変化で判断するのではなく、「以前と比べてどう変わったか」を継続して確認することが大切です。
普段の動きも大切なサイン
筋肉量の変化は、日常の動きにも表れることがあります。
例えば、歩く速度が遅くなった、ジャンプをためらうようになった、階段の上り下りを嫌がるといった変化が見られることがあります。
もちろん、これらは加齢や関節疾患、神経の病気など、筋肉量以外の原因でも起こります。そのため、「筋肉が減った」と自己判断するのではなく、普段との違いが続く場合は動物病院で相談することが大切です。
自宅での観察は、異常を診断するためではなく、小さな変化に早く気づき、適切なタイミングで獣医師に相談するための第一歩と考えましょう。
まとめ
MCS(マッスルコンディションスコア)は、犬や猫の筋肉量を評価するための指標です。
体重やBCSが標準でも、加齢や病気、栄養状態の変化によって筋肉量が減少していることがあります。そのため、犬や猫の健康状態をより正確に把握するには、BCSだけでなくMCSもあわせて確認することが大切です。
自宅では日頃から体を触ったり動きを観察したりして変化に気づき、気になることがあれば動物病院でMCSも含めて確認してもらうとよいでしょう。
参考:栄養評価ガイドライン(WSAVA)
参考:2021年AAHA犬猫栄養・体重管理ガイドライン概要
参考:身体および筋肉の状態スコア(AAHA)
参考:Muscle Condition Score chart, dogs(WSAVA)
参考:Muscle Condition Score chart, cats(WSAVA)





